大道具製作裏話

公演が終わって、もう1週間たちましたね。

ひだまりです。

今年も大道具を担当させていただきました。

毎年、だいたい演出の「こんな感じにしたい」をまずきくのですが、今年の演出のぐのぐ氏に、「なんかイメージある?」と聞いたら、

「無い。」

二つの柱に狛犬のシルエット

と、きっぱり。

ならば、こだわってるシーンはある?と聞いたところ、

「岩戸がガガーって開いて、逆光がバーっと。」

ということでしたので、まずは岩戸をどうするかから始めました。

終盤に出てくる2枚の岩の扉

2枚の岩戸をドンと作ったとして、その場面だけに使うにはデカすぎるし、ソデにしまえないなぁと思い、他のシーンでも使えたら・・・ということで、あのような柱になりました。そして狛犬。本当は立体物を作りたかったのですが、柱にしたことで、行燈のようなものが思い浮かび、切り絵のような狛犬を描き、光で照らすということにしたわけです。そして、場面転換を、柱を回すことで表現する。ふるさとホールは回り舞台の機構があり、過去の公演では度々回していますが、舞台の盆を回さないで場面を転換することに。柱に白い布の面をつくり、その布に色んな色を当てることで、部屋のイメージを変えるみたいなことを演出と話して決めていきました。

かなり高さのある柱自体は、アルミパイプを組み立てました。アルミパイプは昨年の演目「さくら」では、むさいさんの部屋を作る時に使ったものです。

昨年のセット、自宅駐車場にて仮組みしてみたところ
フスマを組み込んで完成したセット

アルミパイプは、六角レンチ一本あれば組み上げられ、しかも、軽くて強度もある。なおかつバラバラにして倉庫にしまえて、再利用できる。そして、90度や平行が容易に作れます。ホームセンターでこれに出会った時、あまりに素晴らしいシステムに心が躍りました!

「なんでもつくれるやん!」

昨年のセットで使用したアルミパイプを組み替えて、今年の柱を製作。

柱の土台となる板は木製ですが、この90cm×90cmの板は、過去の公演「カラマーゾフのまちわびて」で製作した木製のBOXの部品を利用しています。

人が二人腰掛られる強度があります

そして、その木の板の下に、キャスターを4個つけていますが、そのキャスターは、昨年の「さくら」の鳥籠に使ったものを流用しております。

さなぎちゃんの載ってたやつです

3メートルのものを木で組むとかなりの重さになり、安定感を保つのが大変です。下に重量をかけることになりますが、そうすると、キャストが柱を移動するのに力がいるし、スムーズに動かすことが難しくなります。重くなると慣性の法則で、動かした後ぴたりと思った場所で止めることも困難に。

また木製で作ると、捨てるときが大変です。小さく切るのも木屑がでたりするし。

それらを解決してくれたのがアルミパイプ。上部はこれでかなり軽量化したので、下の木の板とキャスターの重みだけで、十分重心を下に安定させることができました。アルミパイプの正式名称はG-funで、DIYする人に人気のシステムです。

そんなわけで柱の骨組みはアルミパイプで難なく完成。ただし、高さが3メートルあったので、通常の自宅の中はもちろん、稽古場でも組み立てられないので、もっぱら駐車場での組み立てとなりました。

柱の側面の4面のうち、2面には壁紙を貼ったプラスチック段ボールを貼り、残りの2面は光を通す布を使用。

劇場に入って仕込みをしてるところ

2枚の布面のうち、1面には狛犬の切り絵が貼り付けてあります。下手の狛犬が「うん」、上手の狛犬が「あ」で、誕生を示す「あ」の狛犬の前足の下には、「玉」を。

合宿時の「あ」この時は反転しています

狛犬を描くにあたり、近くの神社の狛犬とか、ネットの映像とか狛犬を調べまくりました。世の中には狛犬フリークの人がいて、狛犬について詳しく解説してくれているサイトもみつけたり。もともと中国からきたもので、じつは2体のうち、犬は片方だけで、片方は獅子だとか。もう、ネコ科じゃん!

自宅で懐中電灯で照らしたところ

切り絵を貼った面を前にしたとき、具体的には舞台のプロローグとエピローグ的な場面に、この狛犬面にライトを入れて浮かび上がるようにしました。はじめは照明さんに照明を入れてもらおうとしたのですが、上から入れるのは至難の技だし、柱の位置が動いたらもうアウト(実際本番はアウトになったてしまったわけで)。なので、セットにライトを仕込むことに。自宅にあった災害用のLEDライトをつけてみました。1200ルーメンの明るさで光ります。

光が入った状態の「うん」

このライトの操作をする役者が必要となるわけです。つけたり消したり。つけるのはボタンひとつポチっとするだけなのですが、消すのは長押しして手を離さないと、ポチっとしただけでは、点滅モードに移行するだけで消えません。

操作する人に手元は見えない状態です

これが、慣れないとなかなか難しい。担当した4名のキャストの皆様は、小屋入りしてからその操作の練習でした。特にラストシーンは、役者のセリフとともに、暗転するので、暗転と同時にこの柱のライトも消えなければならず、かなりのプレッシャーだったはず・・・。本番は何とか消えてくれて、大道具としましては感謝の一言でございます。お疲れ様でした。

ライトといえば、もう一つ。

「123号室の灯り」

台本では、

「123のプレートがぼうっと浮かび上がる」

とかなんとか書かれています。これも柱に仕込んだわけですが、はじめは岩面の柱を凸凹にしたかったので、その凸凹で123を描き、光のあたる角度で「123」が浮き上がるようにと考えていました。

が、照明さんとの打ち合わせで

「気持ちはよーくわかるけど、上手くいくのはかなり難しいよ。」

とアドバイスをいただき、柱の中にもう一つ別のライトを仕込む形にしました。

演出に説明するときのラフ画

ライトの操作は高さがあるのでリモコンで行いました。

本番の写真 裏にキャストがいて台詞に合わせて点灯

最後に、一番苦労したのが、カフェふることるみの看板です。上手の柱に始めから仕込んであって、後半カフェのシーンで、出てくるやつです。

演出からは

「きゃー幽霊!の台詞の後、風の音のSEが入って、看板がくるっと回るのが理想です。」

・・・・って、えっと、どうするの( ゚д゚)

これも色々と機構を試行錯誤しまして、ホール稽古のときに一度試したら、回らない!で、そこからさらにtry &errorを繰り返し、完成したのは本番前日!

最後の最後まで調整

そしてこの看板のギミックを操作する、のりちゃんに、本番前日に、「こうやってここをこうするの。」と教えて、多分2回くらい練習して本番です。

もうね、本番、回ってくれるかドキドキもんでしたよ。そして、回った後、カフェふることるみ面に戻らないように留めてるのですが、それが反動で戻らないかもドキドキもの。

そのシーンの少し前に柱が上手にハケるのですが、そこで隠していた看板を出して下手の柱との間に挟むように仕込みます。それをたおやめ役の永田さんが、芝居途中の転換時にサッと出す。最後にアキ役の、のりちゃんがギミックのヒモを引っ張って所定の場所に留める。一連の全ての段取りが予定通りに進み、うまく回ってくれたときには、本当によかった。看板が回った後、暗転して、キャストは「きゃー!」と悲鳴を上げてハケるのですが、私は「きゃー!」と言いながら、サムアップしてニヤけていたわけです。そして、看板が回った時に何故か客席からは笑いがおこり、安堵と同時に「えっ?ここ笑うとこ?!」という驚きも加わっておりましたが。

今年は、ライトの操作や、柱の回転、移動など、キャストが演技以外のプレッシャーを感じる場面が多かったと思います。キャストの皆様、上手く動かしていただき感謝です!!

そんなわけで、今年も楽しくモノづくりを堪能できました。来年も作れるといいなぁ。

ヒダマリでした。

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